鬼 入門

日本昔話などの逸話で悪役、悪いものの代表格として一番にでてくるのが 鬼ではないでしょうか。

最近では、鬼滅の刃など漫画でもよく登場する存在ですよね。


は 怪力でかつ狂暴で不死といえるほどの強靭な肉体と人を食べてしまう等恐ろしい性質を持ち、

「悪いもの」の総体として表現されています。姿としては筋肉ムキムキで体も大きく、

頭には角、虎のふんどしをはいて金棒を持っているという格好が浮かぶ方が多いでしょう。

しかし、悪者筆頭というわりには話によっては、お酒をくれたお礼にと人の仕事を手伝う事やお米を持ち寄ることもあれば、

酒宴に迎えて仲良く大騒ぎしてくれるなど気の良い一面もあるようです。

そんなおとぎ話でよく見かける鬼は 実際どのような歴史をもつ妖怪なのでしょうか?


〇鬼の歴史

鬼のルーツは古く、古来中国「隠(おん、[おぬ]とも読みます。 姿が見えないという意味)」という字から来ているそうです。

和名の鬼も古来は於爾(おに)と記され 於という字は「隠」という字が訛って発音され於となったといわれています。

中国では古来 疫病や火災等恐ろしい禍いをもたらす超自然的なものを「鬼人」と呼び恐れていました。

その中で鬼は 自殺したりこの世に執着してしまった幽霊・魂のことを指すようです。


≪時代別 日本の鬼のイメージの移り変わりを示した年表≫

その考えが日本にも伝わり、古代日本でも自然災害のような太刀打ちできない脅威を鬼として恐れていました。

特に人の踏み込めない未開の山や、もっとも恐怖の対象になった死、それに関係する冥界には恐るべきもの、

「鬼」がいると考えるようになりました。この頃は山に潜む巨人や山男、黄泉の国の鬼、

日本神話の邪神や怪物などが、土着信仰の中で恐怖の対象としてと呼ばれていたようです。

 

時代が進み、大和王朝などの統治者が現れるようになると、朝廷に従わない地方の豪族や異民族を鬼と呼ぶようになっていきます。

この頃、有力者に制圧された民族はたびたび反乱を起こし、これら朝廷に従属しない異民族は得体が知れず、

何を企んでいるのかわからない所から中央政権に恐れられていました。

又、古代・中世時代には政治が行き届かずあまり治安がよくなかった為、

盗賊が山等に潜み、里や旅人などを襲って、暴れまわっていました。人々はこれらゴロツキや素行の悪い人々を鬼として恐怖の対象になっていきます。 

このような中世期辺りの鬼は 初代征夷大将軍の坂上田村麿や酒呑童子退治で有名な源頼光ら英雄に討伐されていくのですが、

そうした野盗狩りが伝承や民話のモデルになっていったようです。

平安や中世時代頃、仏教が広く伝わるようになってくると「今昔物語」(平安時代後期に書かれた日本最大の説話集 全31巻)のような

仏教逸話を含む作品や僧侶の説法等から、死後の世界には地獄が存在し、罪を犯したり悪いことをすると地獄で苦しめられるという思想が広まっていきます。

もともの仏教はインド発祥の宗教だったので、インド神話に出てくる羅刹(ラークシャサ)や夜叉(ヤクシャ)、

阿修羅(アスラ)などの鬼が説法集の作品からイメージとして浸透していき、

彼らは仏教思想と相まって恐れられ、地獄の獄吏・獄卒(牢獄の役人)としての姿が広まっていきました。

江戸時代に入ると、庶民文化が花開き、各地に伝わる伝承を基にした人形浄瑠璃や歌舞伎などの芸能作品が盛んに作られました。

昔から恐怖の対象として恐れられてきた鬼でしたが、この頃から 人の心の暗部、そこに潜む闇が恐怖の対象になっていきます。

そのためか、元は人間だったのに執念や怒り、恨みによって鬼となってしまう話が多くなっていきました。

このように、時代や人々の環境により、鬼の持つ恐怖のイメージが積み重なっていき、今の鬼の姿になってきたようです。

古代の朝廷に反した豪族や異民族の姿も一部元になっているためか、人間臭いのかもしれませんね。

<引用・参考文献>

〇幻想世界の住人たち Ⅳ《日本編》

多田克己著 新紀元社発行

〇日本怪異妖怪大事典

小松和彦監修 東京堂出版発行

〇妖怪事典 村上健司著 

毎日新聞社発行

〇鬼 

高平鳴海・糸井賢一・大林憲司/エーアイ・スクウェア共著

新紀元社発行

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