中世ヨーロッパのドラゴン 西洋のドラゴン応用3

中世ヨーロッパでは人々の中で

ドラゴンはどのような生き物と考えられていたのでしょうか?

今回は、中世ヨーロッパのキリスト教的ドラゴンと

土着のドラゴンについて紹介します。

【目次】

聖ゲオルギウスの龍退

ジークフリートの龍退治

キリスト教社会の龍と人々の中に生きる龍のイメージ


聖ゲオルギウスの龍退治

https://www.freemap.jp/listAllItems.html#id=mideast

中世ヨーロッパを代表する龍というと

聖人伝説で退治される龍の話が良く上げられます。

その中で、特に有名なのは、

聖ゲオルギウス(※1)の龍退治の伝説なのだそうです。

聖ゲオルギウスの龍退治の話の内容はこう語られています。

リビア(※2)の小国シレナ湖に住む龍は自らが出す毒気によって

国内に病を蔓延(まんえん)させていました。

当時の人々は龍をなだめるために、羊などの捧げものをしていましたが

ある時、国王の王女がくじで生贄に選ばれてしまいます。

王女が龍ささげられ、食べられそうになった時、

ちょうどそこに、

聖ゲオルギウスが馬で通りかかりました。

聖ゲオルギウスは王女に襲い掛かろうとする悪龍を

槍で貫いて退治し王女を救出しました。

この聖ゲオルギウスの龍退治のような

聖人伝説は当時の中世キリスト教会が

異教徒を追い出す理由を暗に示す話として広めていきます。

秩序を乱す社会悪を悪魔的な龍にたとえ

それを退治する聖人の伝説を伝え広める事で

キリスト教の布教を

推し進めていきました


ジークフリートの龍退治

中世ヨーロッパを代表するもう一つの龍の伝説は

ジークフリートによるドラゴン退治の伝説です。

この伝説はドイツの英雄叙事詩「ニーベルンゲンの歌」の中

語られている話です。

この叙事詩では

英雄ジークフリートが悪龍ファヴニル(※)を退治して

龍が守っていた財宝を手に入れ、

さらに龍の血を浴びたことにより不死身の体を手に入れたと

語られています。

この叙事詩は元々古代ゲルマン人(※3)の

ジクルト伝説(ジクルトはジークフリートのドイツ名)がもとになっていて、

キリスト教徒はとは別に、

古代ゲルマン人の伝承の中

土着の龍の伝承が人々の中で息づいていたようです。


キリスト教社会の龍と人々の中に生きる龍のイメージ

キリスト教会社会のヨーロッパでのドラゴン

神の敵、反社会的な悪魔として描かれました。

一方で、民族伝承の中で語られている

ファヴニルの血を浴びたジークフリートが不死身の体を手に入れたように、

ドラゴンは力の象徴・シンボルとして人々の中に伝わりました。

それにより、中世ヨーロッパの王家や騎士たち

己の力の象徴・英雄としての誇示として

紋章や軍旗に好んでドラゴンの文様を使っていくようになっていったようです。


(※1)聖ゲオルギウス

(英名では聖ジョージと呼ばれる。紀元後270頃~303頃死去)

ローマの軍人。ローマ帝国ディオクレチアヌス帝の

キリスト教徒迫害の時に殉教している。

中世(12世紀)以降、悪龍を退治した伝説上の勇士として有名。

イギリスでは特に親しまれ、

オックスフォード教会会議(1222年)後、イギリスの守護聖人になった。

祝日は4月23日。

(※2)リビア

古代ギリシャ・ローマ時代のアフリカの呼称

(※3) 悪龍ファヴニル

北欧神話に登場する悪龍

北欧神話の伝承「ヴォルスンガ・サガ」のジグルト伝説にて

英雄ジグルトに退治される。

巨大な体を持ち、言葉と知恵と魔力を備えた恐ろしい怪物として描かれている。

(※4)古代ゲルマン人

紀元前5~4世紀に北ヨーロッパに住んでいたインド-ヨーロッパ系の民族。

フランク・アングロサクソンなど多くの部族からなる。

後の民族大移動によってケルト人のヨーロッパを侵略、

また西ローマ帝国の没落をもたらす一方、影響を受けてキリスト教化した。


【参考・引用文献】

〇龍の起源 

荒川紘著 紀伊國屋書店発行

〇図説 竜とドラゴンの世界

 笹間良彦著 遊子館発行

〇ドラゴン

久保田悠羅とF.E.A.R著  新紀元社発行

〇幻想世界の住人たちⅠ

健部伸明と怪兵隊著  新紀元社発行

・ブリタニカ国際大百科事典

・広辞苑

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