動物文様 西洋でのイメージ・意味は?②
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西洋では 動物とはどういう
イメージ・意味を
持つのでしょうか?
今回は西洋での身近な動物の
動物文様の持つ意味に
ついてまとめました。
【目次】
〇犬
〇牛
〇羊
〇ヤギ
〇馬
〇犬
犬は最古の人間に飼いならされた
動物とされ、番犬や狩猟のお供、
ペットなど
古くから様々な役割を
こなしています。
特に 犬は見えない幽霊を察知して
人間に危険を教えることができる
霊的な動物ともされていた
ようです。
人間に忠実な性格を
持つとされる犬は
ヨーロッパでは 結婚における
誠実のあかしとして
既婚の夫人の足元に
よく描かれています。
〇牛
牛は 人間にとって
狩猟や牧畜として
重要視された動物で
先史時代(※1)の壁画
ラスコー洞窟の壁画(※2)にも
牛が描かれるほど
大切な動物とされていたようです。
ギリシャ・ローマ
(オリエント地方※3)
あたりでは
牛は 豊穣・豊かさの神として
崇拝されていたことから
古代では
ヨーロッパ各地で牛神信仰が
盛んだったようです。
ヨーロッパでは 牛は性別によって
表現が変わるようで
オス牛は ”ブル”(Bull)、
メス牛は”カウ”(cow)と
言葉で分かれています。
牡牛”ブル”は大きく乱暴な物と
表現する 一方
牝牛”カウ”はおとなしい牛を
表すという
違いがあるようです
(※1)先史時代
考古学上の時代区分のひとつ。
人類が登場して以来、
文献的史料によって歴史が
解明できる時代に
なるまでを指す。
(※2)ラスコー洞窟の壁画
南フランスのドルドーニュ県
モンティニャック近郊の
ラスコーにある
旧石器時代の洞窟遺跡。
アルタミラ洞窟壁画と並んで
フランコ・カンブリア美術の
最も有名な旧石器時代絵画で
野生の馬、牛、羊・ヤギなどが
黒・赤・黄色・褐色などで
描かれている。
1979年、付近の遺跡群とともに
世界文化遺産に登録されている。
(※3)オリエント地方
ヨーロッパから見て近東諸国。
西洋史上、古代エジプト、
メソポタミアを指す。
〇羊
羊は愛と慈愛にあふれた
動物(※3)として
古代から神への供物・生贄に
使われました。
キリスト教美術では
羊をキリスト教信徒に見立てて
イエス・キリスト(※4)を
羊飼いになぞらえることで
迷える羊(信徒・罪人)を
羊飼いであるイエス・キリストが
正しい群れ(教会)に連れ戻すという
定型表現がよく使われます。
羊はほかにも
12匹の羊でイエスの12使徒(※5)を表現したり
羊や羊の群れで教会を象徴する事
もあるそうです。
羊の中で 特に特別なのが
ラム(子羊)で 新生・復活・春を
象徴するとされています。
(※3)愛と慈愛に満ちた動物 羊
羊はその体からは肉・毛皮・乳など
余すことなく使える動物なので
慈愛に満ちた優れた動物と
されています。
(※4)イエス・キリスト
キリスト教の創始者
北パレスチナのナザレで生まれ
ガリラヤ地方から
エルサレムに入り活動。
ユダヤ教神政体制を変革する活動が
祭司階級やファリサイ派に
危険視され
宗教罪人・反ローマ政治犯として
讒訴
(ざんそ 陰口・讒言などで
訴えられる)され
ゴルゴダの丘で
十字架刑により死去。
弟子たちは 神がイエスの言動を
全面的に肯定して、
イエスを死後3日目に
復活させたと確信、彼こそ人類の救世主(メシア、キリスト)と信じ、
異邦人も歓待する新運動を開始。
これによりキリスト教が興起した。
(紀元前4世紀~紀元後28年頃)
(※5)イエスの12使徒
イエス・キリストが
福音(イエス・キリストの説いた神の国と救いの教え。ゴスペル)を
伝えるために
特に選んだ12の弟子。
ペトロ(シモン)、
アンデレ、ヤコブ、ヨハネ
フィリポ、バルトロマイ、トマス、マタイ、アルファイの子ヤコブ、
タダイ、熱心党のシモン、
イスカリオテのユダ。
ユダはのちに裏切って除かれ、
マティアがこれに代わった。
後にはパウロ、バルナバ、
イエスの兄弟ヤコブらも
同格者として加えられた。
〇ヤギ
古代ヨーロッパでは
ヤギの角には生殖力が宿ると
考えられていたことから
ヤギは生殖の神として
信仰されていました。
ヨーロッパでは ヤギも
牛と同様 メス、オスで
象徴・表現が異なっているようで
メスのヤギは乳を与える姿から
育てる様子をよく描かれる 一方
雄ヤギは 否定的な表現が多く
ギリシャ神話のパーン(※6) や
サテュロス(※7)の下半身が
オス山羊である事から
好色的の象徴など
滑稽な姿として表現されることが
多いようです。
キリスト教美術で ヤギは
悪魔・異端の象徴として
嫌われたので
あまり 文様としては
発展しませんでした。
(※6)パーン(牧神)
ローマ神話の林野及び牧畜の神。
半人半獣
(上半身は人、下半身は山羊)
ギリシャ神話のパンと
同一視される。
ギリシャ神話のパンは
山羊の足、角、ひげをもつ
醜男で葦笛を吹き
歌舞を好む。牧羊神。
(※7)サテュロス
ギリシャ神話の山野の精。
ヤギの特徴をもつ半獣半人の姿で、快楽を好む。
(goo辞書 サテュロスより)
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E3%82%B5%E3%83%86%E3%83%A5%E3%83%AD%E3%82%B9
〇馬
古代から馬は生活に
欠かせない動物として
古代エジプトやペルシャの壁画に
描かれました。
ただし馬は 主役というより
馬車や狩猟などでの脇役として
描かれ
他の動物のように
信仰対象になったり
何かを象徴するものとしては
表現されることは
なかったようです。
【引用・参考文献】
〇ヨーロッパの装飾と文様
海野弘著 パイインターナショナル発行
〇ヨーロッパの文様事典
早坂優子著 視覚デザイン研究所発行
〇広辞苑 第6版
〇ブリタニカ国際大百科事典 2009年


