東洋のドラゴン応用1 古代インドの悪蛇・蛇神

古代インドでは

蛇は水・河の神としても祀られていましたが

一方、一部の蛇は 悪龍として恐れられてもいました。

今回は 古代インドにて恐れられていた悪蛇について

紹介します。

【目次】

バラモン教の悪蛇アヒ

仏教の守護神になった蛇神 龍王


バラモン教の悪蛇アヒ

紀元前1500年頃、インドに侵攻し土着の民族を退け、

支配者となっていたアーリア人(※1)が信仰していた

バラモン教(※2)の聖典『リグ・ヴェーダ』には

アヒ(※3別名:ヴリトラ)と呼ばれる悪龍が登場します。

この悪蛇アヒは、毒蛇コブラの姿をしていて、

世界中の水を体内に集めていたそうです。

『リグ・ヴェーダ』では 

バラモン教の主神インドラ(※4)が悪蛇アヒを打ち倒すこと

七つの大河を解き放ち

大地に豊かな雨をもたらしたと記されています。

これらの功績により、

インドラ神は雨をもたらす神として信仰されるようになりました。


仏教の守護神になった蛇 龍王

紀元前500年ごろ仏教の始祖、

ブッダ(ゴータマ・シッダールタ※5)が

北インドを中心に仏教を広めていきます。

仏教は インドに広まっていく過程で、

古代インドの神話体系を取り込んでいき

如来・菩薩・明王・天部など

多神教的要素を持つようになっていきました。

アーリア人侵入より古くから

インドで信仰されてきた蛇神ナーガ(※6)も、

ブッダの教えに感激して従うようなった(帰依した)とされ

仏の教えを守る守護神として、

仏教の尊格の一員として扱われるようになります。

この考えはのちに、中国、朝鮮、日本にも伝わり

仏の守護神としての龍王の姿は、

仏教画や彫像の題材としてよく使われるようになりました。


(※1)アーリア人

インド-ヨーロッパ語系諸族の一派で、

イラン・インドに定住した民族。

アーリア人の祖先は中央アジアで遊牧生活をしていたが、

紀元前2000年頃から

一部が南下し、アフガニスタンを経由してインダス川上流地域に侵入。

インダス文明を作った先住民族に代わり定住耕作生活を始める。

また、さらにその一部が紀元前1000年ごろに、

インド半島のガンジス川流域に侵入し

先住民を征服して混血し、のちのインド文明発展の主役となった。

(※2)バラモン教

インドの古代の宗教。仏教興起以前のヒンドゥー教の事を指す。

アーリア人がインダス川上流域に侵入し、

先住民を征服してこの地域に定住、発展する間に形成された信仰。

自然現象を神々として畏怖し、

生贄などの供犠によって神をまつることで災厄を免れ、

幸福がもたらされると信じた。

この祭りを司るバラモンが最高階級で、

第二位に王族(クシャトリヤ)、第三位に農工商人(バイシャ)、

被征服民族の奴隷(シュードラ)を

最下位とする

カースト制を作り上げた。

(※3)アヒ(別名:ヴリトラ)

注)参考文献内ではアヒ=ヴリトラとして

同一視する記事をいくつか見られたので

補足としてヴリトラに関する説明をここに載せます

ヴリトラはインド神話にて神々と敵対する悪蛇。

黄色い目と大きな牙を持ち、真っ黒な体を持っている。

『リグ・ヴェーダ』では

アーリア人の主神インドラに討伐される。

ヴリトラ生まれについては

事象を創造する力を持つ仙人から生まれた、または

同じく創造神の一種であった鍛冶の神から生み出されたという

2つのパターンの話が残っている。

両方の物語からは、造物主が自ら生んだ神々の力の増幅を恐れ、それに対抗するために

ヴリトラを生み出したという所が似通っている。

当時の世相の影響を鑑みてこの話を読んでみると、

軍神インドラと神官の子ヴリトラの争いから、

古代インドの戦士階級と神官階級の争いの様子をうっすらと感じられる。

(※4)インドラ神

インド神話における英雄神。別名:帝釈天

インドラに関す逸話は『リグ・ヴェーダ』の四分の一を占めている。

雷神をしての性格が強く、全身茶褐色で、巨大な体で2頭の名馬の引く

戦車で天空を駆け巡る、アーリア戦士の理想像として崇拝された。

信者に対して非常な恩恵を与える反面、インドの女神ウシャスの車を破壊するなど

乱暴な一面を持ち合わせ たびたび 

インド神話での神界の平和を崩している。

とはいえ、インドラはインド神話では

神々の代表者といわれている。

(※5) 仏陀 (ゴータマ・シッダールタ)

仏陀(ブッダ)釈迦(シャカ)とも呼ばれる

仏教の開祖。シャカ族の皇子として生まれるが、29歳の時に出家をする。

修行の末、35歳のころ ブッタガヤー

(現インド、ビハール州ガヤー市南)の菩提樹の下で悟りを開き

覚者となった。以後80歳で亡くなるまでガンジス川流域の各地を回り

人々に仏教を布教していった。

(※6)ナーガ(ナーガ族)

インド半島にアーリア人が侵入する以前の土着の人々が

神として信仰していた蛇神の総称。

この信仰は仏教衰退後にインドに広まるヒンドゥー教でも続けられ、

ヒンドゥー教の神殿でもナーガの彫像が見られる。

上半身が人間、下半身が蛇の姿をしている。ナーガが蛇の形をとる時は

たいていコブラの姿をとるが、

上半身が人の時も背後にコブラ頭が描かれていることが多い。

神としてのナーガは主に地下世界の主か冥界の守護神として

描かれている。

仏典やヒンドゥ教の叙事詩では ナーガの天敵は、巨大な鳥ガルーダ

(別名:迦楼羅 カルラ)とされている。


【引用・参考文献】

〇竜の起源 

荒川紘著 紀伊國屋書店発行

〇図説 竜とドラゴンの世界

 笹間良彦著 遊子館発行

〇ドラゴン

久保田悠羅トF.E.A.R著  新紀元社発行

〇インド曼荼羅大陸

蔡丈夫著 新紀元社発行

・ブリタニカ国際大百科事典  2009年版

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