岩魚坊主(イワナボウズ)
岐阜県の恵那市・中津川市に伝わる
川魚のイワナが僧に化けて出る妖怪です。
今回は、この妖怪について詳しくご紹介します。

岩魚坊主の主な伝承は、このようなものです。
川で毒を流して魚を捕る「毒もみ漁」をしていた漁師に
見知らぬお坊さんがやってきて「そんな残酷なことはやめなさい」
とさとしてくるので、
うっとおしく思った漁師はお坊さんにご飯をおごって
差しさわりのないように帰ってもらいました。
そのあと、再び毒もみ漁をしていると
大きなイワナが取れたのでお腹をさばいてみると
先ほど漁師がお坊さんにおごった食べ物が出てきて、
漁師は驚きました。
先ほど漁をやめるよう、さとしてきたお坊さんは
イワナが化けたものだったのでした。
という話が伝わっています。
江戸後期に書かれた「想山著聞奇集 (しょうざんちょもんきしゅう) 」 (※1)には
「美濃(現在の岐阜県)恵那郡の
川上、付知、加子母(現在の岐阜県恵那市・中津川市)では
昔からイワナは坊主に化けるといわれているがこれは事実である。
私(想山著聞奇集 の著者、三好想山自身)の知人中川某がその村に行き
確かに聞いたことである」と記されています。
このような魚がお坊さんに化けて毒もみ漁をやめるようにさとす話は
イワナ以外にもあるようで、同じ川魚のヤマメやウナギ、
沿岸地方では海水魚のタラが人間に化けるともいわれています。
たいていは、その川のヌシだそうです。
魚も長い年月を生きていると、
妖術や化けることができるようになるんですね。
(※1)『想山著聞奇集』(しょうざんちょもんきしゅう)
『想山著聞奇集』は、江戸後期の書家・随筆作者、三好想山の主著。
動植物の奇談、神仏の霊異、天変地異など57話の奇談を集めた。全5巻。嘉永3年(1850年)刊。
【参照文献】
『日本庶民生活史料集成 一六』
『日本怪談集 妖怪篇』 今野円輔 編著
『想山著聞奇集』 (下記リンクより引用)
https://www.minakatella.net/shoko/shozantyomonkishu.html


